和平飯店は上海市黄浦区南京東路20号、外灘(中山東一路)と南京東路の交差点に位置する象徴的な高級ホテル。南京東路を挟んだ北楼は1929年に華懋飯店として開業した沙遜大厦、南楼は1908年完成の匯中飯店を起源とします。1956年に「和平飯店」と改名され、現在はフェアモント・ピース・ホテルとして運営。アール・デコ様式の建築で、全国重点文物保護単位に指定されています。
特徴

和平飯店(Peace Hotel)北楼。2004年12月16日に撮影。

和平飯店南楼(写真右)と北楼(左)。2016年8月30日撮影。
和平飯店の最大の特徴は、上海の近代化と国際性を体現する建築様式と歴史的価値にあります。北楼は装飾芸術派(アール・デコ)を基調としたシカゴ学派の影響を強く受けたデザインで、高さ約77メートルの花崗岩外壁と、特徴的な緑色の銅板を貼ったピラミッド型の屋根が外灘のスカイラインを彩ります。この緑の屋根は「黄浦江畔の緑の宝石」と称され、夜間にライトアップされると一層際立ちます。
内部空間は1930年代の華やかさを丁寧に再現しており、大堂の八角庭や「豐」字型のレイアウト、イタリア産大理石の床、ラリック風のガラス装飾などが訪れる人を当時の雰囲気に引き込みます。特に九国特色套房は、インド、イギリス、中国、アメリカ、フランス、イタリア、スペイン、日本、ドイツの各様式を反映した装飾が施され、ホテルの象徴的存在です。

和平飯店北楼の1階南側(2016年8月30日撮影)
文化的な魅力も豊かで、1980年から続く老年ジャズバンドの演奏は、平均年齢80歳を超える演奏者が毎晩「夜上海」などの名曲を奏でる伝統として知られています。また、平和をテーマとした博物館や、週末の茶舞イベントなど、歴史と現代が融合した体験を提供しています。外灘に面した立地から、黄浦江と対岸の陸家嘴の景観を一望できる点も大きな魅力です。
- アール・デコ様式の外観と緑色の銅屋根
- 九国特色套房による国際的な室内装飾
- 老年ジャズバンドの伝統的な演奏
- 外灘と黄浦江を望む立地と眺望
- 全国重点文物保護単位としての歴史的価値
主な施設
和平飯店は約270室の客室を備え、うち39室がスイートです。九国特色套房は特に人気が高く、各国の文化を反映した調度品や装飾で統一されています。沙遜自身が居住したとされる沙遜スイートも用意されており、歴史的な趣と現代的な快適さを兼ね備えています。
飲食施設としては、中華料理の「龍鳳廳」が代表的です。本幫菜の伝統を大切にしつつ、中西の技法を融合させた料理を提供し、ホテルの顔となっています。その他、和平廳をはじめとする宴会場や多機能スペース、ビクトールズ・カフェなどがあり、会議やパーティーにも対応します。屋上テラスからは外灘のパノラマを楽しむことができます。
さらに、水療中心(スパ)、屋内プール、フィットネスジムなどの現代的な設備が整えられ、2010年の改修時に充実が図られました。館内には平和博物館が設けられており、ホテルの歴史資料や写真、調度品を展示しています。これらの施設は、単なる宿泊機能を超えて、文化的な体験の場としても機能しています。
- 九国特色套房をはじめとする約270室の客室
- 龍鳳廳などのレストランとバー
- 平和博物館と歴史展示スペース
- 水療中心、プール、フィットネスジム
- 屋上テラスと宴会場
歴史

和平飯店南楼(2016年8月30日撮影)
和平飯店の歴史は、南楼と北楼で大きく異なります。南楼の起源は1854年に遡り、当時「中央飯店」として西僑向けに開業した上海最初期の西洋式旅館の一つです。1903年に英商匯中洋行が買収して「匯中飯店」と改称し、1906年から1908年にかけて6層の建物に建て替えられました。この際、上海で初めてエレベーターが設置されたことでも知られ、屋上庭園も備えていました。1909年には万国禁烟大会が開催され、国際的な注目を集めました。その後火災による被害を受けましたが、1965年に和平飯店の南楼として統合され、現在はスウォッチ・アート・ピース・ホテルとして芸術家向けの施設となっています。

和平飯店北楼の1階天井(2016年8月30日撮影)
北楼は、英籍ユダヤ人のサー・ヴィクター・サッスーンが投資し、1926年から建設が始まりました。公和洋行が設計を担当し、1929年9月5日に沙遜大厦として完成、華懋飯店(Cathay Hotel)として開業しました。当時「遠東第一楼」と称された高さ約77メートルの高層建築で、鉄筋コンクリート構造を採用し、花崗岩の外壁と緑色の銅屋根が特徴です。5〜9階がホテル部分で、九国特色套房や高級レストラン、舞踊場を備え、上海最高級の社交場として機能しました。ノエル・カワードが『Private Lives』を執筆した場所としても知られ、チャップリンをはじめ多くの著名人が宿泊しました。
新中国成立後、1952年に北京市で開催されたアジア及び太平洋地域平和会議を記念し、1956年3月8日に華懋飯店が「和平飯店」と改名されて再開業しました。1965年には南楼が統合され、南北両楼で運営されるようになりました。1990年代には「世界最著名飯店」に連続選定されるなど国際的評価を高めました。2007年から2010年にかけて大規模な修繕が行われ、「修旧如旧」の原則のもと歴史的外観と内部を可能な限り復元しつつ、現代的な設備を追加しました。2010年7月にフェアモント・ピース・ホテルとして再オープンし、現在に至っています。
まとめ
このように和平飯店は、上海開埠期からの西洋式宿泊施設の系譜を継ぎ、租界時代の華やかさ、戦後の変遷、現代の国際ホテルとしての再生を経て、外灘を代表する文化的・商業的シンボルであり続けています。訪れる人々は、建物そのものが語る上海の百年史を、静かに感じ取ることができるでしょう。


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